介護コラム⑫ 日常はグレー|訪問介護の予定外のトラブル、ヘルパーはどう動く?

「買い物」のついでに「着替え」は頼める?知っておきたい訪問介護のグレーゾーン
皆さんこんにちは。「えらべる介護」のみやちゃんです。 前回までの2回で、訪問介護の「買い物」と「掃除」についてお話ししました。ここで、こんな疑問を抱いた方も多いのではないでしょうか。 「買い物のヘルパーさんが来た時、親がトイレを失敗していたら『私は買い物担当なので…』と断られるの?」 答えは、「そう単純にはいきません」。 日常生活は「ここから身体介護、ここから生活援助」と、きれいに切り分けられるものではなく、実は「グレー」な部分が多いのです。今回は、サービス中に予定外のことが起きた時の現場の対応についてお話しします。
日常生活は「グレー」でできている 日常生活は、書類の上のようにきれいに分けられるものではありません。私たちは日々、制度の枠組みと、目の前のご利用者の「今必要な助け」の間で動いています。
生活援助中に身体介護が必要になったら 例えば、掃除や買い物のために訪問した際、以下のような緊急事態に直面することがあります。
ご利用者が床に座り込んでいる(転倒・転落)
排泄が間に合わず、衣類や寝具が汚れている
このような場合、ヘルパーは予定を変更して「身体介護(移乗・衣類交換・排泄介助など)」を行うことができます。 やむを得ない状況での柔軟な変更は、制度上も認められています。
ただし、現実的な「制約」もあります 「柔軟に対応してほしい」というお気持ちに応えたい一方で、どうしてもできないケースがあります。
人員の限界:小柄なヘルパー一人では、床から抱え上げることができない場合があります。
時間の限界:ヘルパーには次の訪問予定があります。調整のために事業所へ連絡し、応援を呼ぶなどの「待ち時間」が発生することもあります。
生活援助の「ついで」にできる身体介護 掃除をしながらの「お薬飲んでくださいね」という声がけ。これは「服薬介助」という身体介護にあたりますが、「おおむね5分未満の軽い身体介護」であれば、生活援助の中で行うことが可能です。
服薬の声がけ・見守り
薬の袋を手渡す
服用確認の記録 これらは、生活援助サービスの流れの中でスムーズに対応できます。
原則として「できない変更」もある 一方で、緊急性がない身勝手な予定変更は対応できません。
×「今日は掃除はやめて、入浴したい」
×「買い物代行ではなく、一緒に出かけたい」 これらは「やむを得ない」とはみなされず、原則としてお断りすることになります。ヘルパーは「便利屋」ではないという点にご注意ください。
ポイントは「事前の計画(ケアプラン)」 日常生活がグレーだからこそ、あらかじめ「もしもの時」を計画に盛り込んでおくことが大切です。 「基本は買い物代行だが、体調が良い時は同行」「体調不良時は身体介護を優先」とケアプランに書かれていれば、状況に応じた迅速な対応が可能になります。
まとめ
日常生活は身体・生活ときれいに分けられない
やむを得ない場合は柔軟に対応するが、人員や時間の限界もある
「もしも」を計画しておくと、現場での対応がスムーズになる
「現実の中でどう動くか」を知っておくことが、安心な在宅生活につながります。
次回は、さらに一歩踏み込んだ「身体介護の中の、ちょっとした家事」についてお話しします。
この記事を書いた人
みやちゃん
保有資格:介護福祉士/介護支援専門員/同行援助従業者養成研修(応用過程)
訪問介護管理者(歴10年以上)/ 介護支援専門員・介護福祉士 訪問介護の現場責任者として、10年以上にわたり在宅介護の「はじまり」から「終わり」まで、あらゆる局面を実務として経験。制度の枠組みだけでは解決できない、ゴミ屋敷化、近隣トラブル、家族関係の断絶といった、在宅介護の過酷な現実に数多く立ち会ってきた。 介護福祉士、ケアマネジャー(介護支援専門員)の資格に加え、視覚障がい者の外出を専門的に支える「同行援護従業者(応用課程)」を修了。専門的な知見と、10年の現場実績に裏打ちされた「判断力」が持ち味。 「みやちゃん」の愛称で呼ばれるが、その本質は「どんなに困難な状況でも、決して見捨てずに出口を探し抜く」という、ご利用者様やご家族様への徹底した伴走姿勢にある。 「本人の言葉」と「目の前にある事実」のズレを見逃さず、ご家族様が一人で抱え込む限界を突破するための確かな道筋を提示し続けている。

